第18回『このミス』大賞1次通過作品 次の99人

遺伝子編集を受けた”九十九人”が抹殺された
科学者の娘と同居少女が真相を追う近未来サスペンス

『次の99人』今村ポン太

 受精卵の遺伝子に手を加える”ゼロ治療”は、多くの国において禁忌とされている。日本でも遺伝子編集した受精卵を胎内に戻すことは禁じられていたが、二〇二〇年に受精卵を胎外で育てる技術が確立され、違法とされるまでに九十九人のデザイナー・ベビーが誕生した。そして四半世紀の後──”九十九人”と呼ばれる彼らは好奇の対象になっている。
 彼らを生んだ科学者・國清寿一郎の娘である香帆は、五か月後に解禁されるゼロ医療の販売員だ。商談相手の家で不遇な少女・亜莉澄を目にした香帆は、彼女を引き取って育てることにした。”九十九人”の一人である東條亞熾に逢い、解禁後のデザイナーベビーは「僕たちとはまったく違う生き物だ」と断じられた香帆は、上司に襲われたところを東條に救われる。その数日後、政府主導の”九十九人”が集まるシンポジウムの会場でテロが発生し、九十五名の参加者たちが殺害された。
 音もなく九十五人を殺した方法、各々の遺体から”合わせると人間一人分になる”部位を持ち去った理由──大掛かりな謎を秘めた事件は、亜莉澄の推理によって意外な展開を見せていく。香帆の心理に不自然さはあるが、これは設定上の都合と割り切るべきだろう。遺伝子治療をめぐる陰謀をきっかけとして、目に見えていたものを次々に反転させ、ヒロインを容赦なく翻弄し、思いがけない地点へ読者を導くプロットはまさに一級品。なにげない伏線とトリックの使い方も秀逸だ。

(福井健太)

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