第18回『このミス』大賞1次通過作品 模型の家、紙の城

プラモデルで男の浮気がわかり
家のジオラマで大量殺人が明らかになる
主人公は関係ない紙の鑑定士なのに探偵役?

『模型の家、紙の城』歌明田敏

 紙の鑑定という珍しい仕事をしている個人事務所の渡辺圭が主人公。暑いさなかに神保町あたりを御用聞きに回って西新宿へ戻ると、紙鑑定を神探偵と間違えた美容師が、こんなのもわかるかとプラモデルの写真を見せる。彼氏が急に作り始めておかしいから調べてくれないかと言われて、以前模型専門誌の仕事をしたことがあったのを思い出して引き受ける。編集部経由でベテランのプロの模型作りの土生井を紹介されて自宅を訪ねて、意外な真相が明らかになるのが導入部である。
 次に友人の悩みを聞いてくれと言われて会うと、3ヵ月前から行方不明の妹の部屋にあった家屋のジオラマを見せられる。また土生井に相談に行くといろんな説明を受け、屋根を外すとフィギュアが3体立っていて、これは誰かが拉致されていることかと推測する。依頼者に見せるとイニシャルで母親と妹と義父だろうと言い、ひどい過去が明らかになり、そこからは話が広がって過去の大量殺人やら刑事との鉢合わせやら、南三陸へ行くのにスーパーカーで暴走する女やらで、のんびりしてるのか悲惨なのか、よくわからない筋立てで物語が進んでいく。
 ただ脇役のさえないプラモデル作りの年寄りが、自覚なしに名推理を披露するのは楽しいし、ジオラマから推測して出かけた地点で白骨死体を発見するなど、これまで読んだことのない展開なのに感心しました。
 もちろんいろんな機会に主人公の紙の知識も役に立ってます。どうやら不思議な組み合わせのストーリーが頭に浮かぶらしいので、これは一つのユニークさだと思いました。

(土屋文平)

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