第17回『このミス』大賞1次通過作品 君の触れざる手は裏切らない

好きなのは、手か、心か――。
サプライズが仕掛けられたフェティシズム・サスペンス。

『君の触れざる手は裏切らない』松山愛流

 派遣社員の山本は、女性の“柔らかい感触と温度が伝わってくる”手に過剰な魅力を覚える、いわゆる“手フェチ”だ。毎週のように同じマッサージ店を訪れ、同じコンビニに足しげく通うのも、お目当ての女性の手に触れるためだった。
 山本には、勤め先で気になっている女性がいた。なぜかいつもカレーばかりを食べ、ひとの輪から外れた印象の事務員・笹崎に山本は惹かれていく。しかし自身のその想いは、彼女に対しての好意なのか、それとも手がタイプなだけなのか、よくわからなかった。
 そんなある日、山本は笹崎から助けを求められる。何者かがネット上の掲示板に会社内の誹謗中傷を書き込んでおり、そこには笹崎に関するものもあった。怖がる彼女のために犯人探しに乗り出す山本だったが、思わぬ事態がつぎつぎと……。
 “手フェチ”という題材が、まず目を惹いた。フェティシズムを持つ人間の内面を、ことさら奇異に、そしてからかうような描き方をしていない点も悪くない。ただ、文章とセリフ回しはいささか拙さが目立ち、のちに山本が通い詰めることになる手カフェのオーナー・佐々木のような突飛なキャラも出てくるものの、登場人物も総じて平板な感は否めない。正直、途中まで二次に通すことは考えていなかったが、後半に入ってから加速するミステリ的展開を読んで思いが変わった。これといった驚きも意外性もないまま終わりを迎えてしまう作品が多いなか、ラストにダークなサプライズを仕掛けるなど、今回読んだどの応募作よりも「ミステリを書こう」という強い意志が感じられた。甘めの評価ではあるが、二次に推す。

(宇田川拓也)

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