第17回『このミス』大賞 次回作に期待 古山裕樹

『透明人間』真下処凛
『サーキュラー・テイル』大山哲夫
 
 真下処凛『透明人間』は、ある大学の演劇部での人間関係を、公演で起きた事件を通して描いた物語。
 演劇に関わる人々のドラマとしては完成されていました。ただ、ミステリとしての仕掛けが気になりました。
 双子が入れ替わるというものですが、これ、舞台上の一瞬だけならともかく、それ以上続けるのは無理ではないでしょうか。作中に描かれた、二人の個性の違いからそう思いました。作中人物が、たとえ一時の気の迷いにしても、これを行けると判断した、というところの説得力が欠けていたと考えます。
 人物描写の雑な作品だったら、むしろ気にならなかったかもしれません。ただ、作品の魅力の根幹は、多視点を切り替えながら人間関係を浮かび上がらせるような、きちんとしたキャラクターの造形とその描写にあるので、こちらを活かしてまた挑んでいただければと思います。

 大山哲夫『サーキュラー・テイル』は、孤島の館に集められた人々が、ある「ゲーム」をするうちに殺人が起き……という謎解きミステリ。
 おそらく、作中最大のギミックである、館そのものへの仕掛けにはかなりの思い入れがあるのだと思います。ただ、その使い方が大変もったいないと感じました。大仕掛けによって作られる謎が、非常に控えめなので……。これだけの大仕掛けなら、それに見合った凄まじく不可解な状況がほしいところ。何を見せるかだけでなく、どう見せるかにも心を配っていただければと思います。
 もったいないといえば、もう一つ。本作は現在の事件を描きながら、二年前に起きた事件を間接的に語る形をとっています。ただ、間接的に語られるだけの「二年前の事件」のほうが、現在の事件よりも謎とその解明が凝っているのは、非常にもったいないと思います。
 むしろ内容を二年前の事件だけに絞って、謎がもっと引き立つような見せ方をしたほうが、大仕掛けのインパクトが際立つのでは……と感じました。
通過作品一覧に戻る