第17回『このミス』大賞1次通過作品 ギフト

元ホストが小学校一年生を担任?
キラキラネームだらけのクラスに、残虐な事件が忍び寄る……。

『ギフト』黒川慈雨

 ホストクラブで働いていた俺。皇聖夜。女性の金で生きてきた俺は、そんな生活を見かねた祖父によって、無理矢理転職させられた。転職先は小学校である。本名の上杉三太に戻って、小学校一年生を教えるのだ。それも、担任として、である。キラキラネームの子供たちに囲まれて学校生活をスタートさせた俺は、なんとか子供たちと親しんでいく。そんな日々に、妙な出来事が割り込んできた。植物や動物が傷付けられる事件が続いたのだ。そしてその事件は、学園生活にまで侵入してきた……。
 特段文章が上手いわけでもプロットが突出して優れているわけでもないが、人物造形や、人間関係の描写が秀逸である。それも、元ホストと小学生たちという、下手をすれば“記号”になってしまいそうな面々をそれぞれきちんと一人の人間として造形し、さらに、これまた一筋縄では描ききれない彼等の人間関係を鮮やかに、かつ魅力的に描き出したのだ。ユーモアと苦味のバランスも絶妙。美文ではないが、十分に機能的な文章であり、読者に伝えるべき事項が明確に伝わってくるのである。それ故に、クイクイと愉しく読まされてしまう。テンポがよいのだ。この読書体験は新鮮だった。
 その心地よいテンポと表裏一体になっているのが、子供たちの造形の巧みさである。事件の流れと並行させつつ、子供たち一人一人の紹介が連続するのだが、一歩間違えば無味乾燥な人物紹介が連続して読者の退屈を誘うところを、キラキラネームという特徴を十二分に活かして、子供たちの個性をしっかり読者に理解させるのである。そうでなければ、一クラス分の生徒のそれぞれの個性など、読み手の心に残らなかったはず。鮮やかな手つきだ。
 そうしたなかでも最も個性的な子供――彼こそがギフトだ――と、事件の関係が語られていく様は、本書の持つミステリとしての魅力である。ここを描いていくことで、いくつもの“何故”が解かれていくのだが、その果てには、感動が待っていた。あまりこんな手垢のついた言葉は使いたくないのだが、たしかに“感動”があったのである。
 多くの人に読んで欲しいと思う作品だった。

(村上貴史)

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