第17回『このミス』大賞1次通過作品 ライク・ライカ

大気圏外を超音速飛行中に
飛翔体の中で女性宇宙飛行士が死亡
誰がどうやって彼女を殺したのか?

『ライク・ライカ』朝倉雪人

「ライカ」は、かつてソ連が打ち上げたロケットに乗せられていたイヌのことであり、本作で宇宙飛行する女性「来夏(らいか)」のことでもある。
 横浜から北海道の十勝へ引っ越してきた中学三年生の北斗は、大空勇利、山鹿光太郎(以上男子)、折茂芽衣沙、熊切来夏(以上女子)と仲良くなり、オリオン座流星群の下で、それぞれの将来を語り合う。
 その際の宣言通り、来夏は宇宙飛行士になった。民間初の有人宇宙飛行において、乗組員に選出されたのだ。しかし彼女は、肝心の飛行中に脳出血により死亡してしまう。
 当初は単なる事故死と思われていたが、離陸直前にとある団体が彼女の殺害予告動画をネットにアップしていたことが判明する。「人が嘘をつく瞬間」を見抜く能力を持つ北斗は仲間たちとともに来夏の死の真実を追う。だがこの仲間たちは、同時に容疑者でもあるのだ。果たして真相はどこにあるのか……。
 本作の最大の眼目は、なんと言っても「大気圏外にいる人間をどうやって殺すか」という、特殊状況における殺人の謎である。これが実に魅力的だ。
 北斗、来夏、そして三人の友人たちが十代だった頃の交流部分は、青春小説の趣もある。北斗の来夏に対する恋心。彼らの甘酸っぱいやりとりに、読者は自分のティーンエイジャー時代を重ねてしまうことだろう。
 我々の世界におけるツイッターのようなSNS「クリッカー」の用い方も効果的だ。これがストーリー的にも、重要な役割を果たす。
「ライカ犬は、正確にはいつ死んだのか?」という謎も、事件に絡んでくる。これを考えることで、真相が近づいてくるのだ。
 後半、終盤に入るまでやや盛り上がりに欠ける感じがあるので、もうひとヤマ加えた方が面白くなるかもしれない(全体の構造として、難しいかもしれないが)。
 作者は「朝倉ユキト」名義で星海社FICTION新人賞を受賞し、既に商業出版物のある方なので、実力は充分。非常に意欲的な近未来SFであり、ミステリーである。

(北原尚彦)

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