第17回『このミス』大賞1次通過作品 思い出質量パーセント濃度

名推理を披露するのは同級生
身近な事件を鮮やかに解き
驚きの最終章へ

『思い出質量パーセント濃度』猫森恋

 通夜のために久しぶりに実家へ帰った八尋竜一は家の前で、久遠という名前の少女から思い出を聞かせてほしいと声をかけられる。そこから竜一が小学校中学校のときのことを振り返ると、同級生の渡良瀬良平といろんな事件にぶつかったのを思い出す。小六まで良平を超然としていていけ好かないやつだと感じていた竜一は、校庭の穴から出た血の理由を鮮やかに解いた良平に驚いて友人になった。良平は将来父親の探偵事務所を継いで探偵になるのだと話す。中学へ入った竜一は宇宙人の話が好きな北川雪子という同級生と良平と3人で公園で倒れていた祖父の謎を解く。ここでも名推理を披露するのが良平で、迷推理が雪子で竜一は聞き役になる。田舎の小さな事件でも謎は魅力的だし解決後のもう一つ隠されていた真相なんて、しゃれていて好感がもてる。
 中学最初の夏休みに雪子が引っ越してきた特別な事情を竜一は聞き、そこからしだいに雪子の様子がおかしくなり、2学期が始まると雪子が川に飛び込んだと知る。雪子の父親も行方不明になる。そのあたりまで話すと竜一は自分の今の状況を知ることになり、さらに名探偵の再度の登場もあって驚きの終わり方をする。
 文章はいいし、語り口も落ち着いていて、異常なはずの種明かしもすんなり受け止められます。出てくる人みんな実感があって、良平が大人顔負けの知識を持っているのも不自然ではありません。江戸時代から代々続いている探偵事務所の子孫という設定ですからねえ。

(土屋文平)

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