第17回『このミス』大賞1次通過作品 不可逆チルドレン

異常殺人で幕を開け
特異な施設で事件は続いて
怖ろしい結末へ

『不可逆チルドレン』五十嵐憂季

 冒頭で13歳の少女がホテルの一室で3人の男を刺殺、撲殺、絞殺と異なる方法で殺し、一人の少女にはニコチンを注射して重傷を負わせるという派手な始まり。犯人が狐の面をかぶっていたことからフォックス事件と呼ばれる。
法学部4年の瀬良隆臣はゼミの教授時田から助手役を任せられ、フォックス事件の犯人の一卵性双生児の妹神永秦乃の入っている施設へ行く。そこには神経犯罪学者の早霧沙紀がいて、脳機能の障害で犯罪を犯してしまう不可逆少年少女の治療法を研究していた。泰乃のいる施設には他に3人の少女がいていろんな事件が起きる。同時に隆臣が家の従業員佐原健晴の死体を彼のアパートで発見すると、状況は明らかに不自然で手錠や注射器があった。さあこれらの事件の結びつきは? というのがメインの筋で、人工的な舞台装置に密室トリックと賑やかに進む。
 盛り沢山なのは若い人の好みなのだろうし、もっと好意的に受け止めれば意欲の現れと言えそうです。隆臣の実家が七夕飾り製造業というあたりには生活感があって、人工的なミラーハウスという施設の設定や小道具のガラスの靴などとの対比の妙もありました。

(土屋文平)

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