第17回『このミス』大賞1次通過作品 弁護士は元アイドル

ハチャメチャ法廷小説
これまでなかった弁護士もの
どうやって事件を解決するのかお楽しみ

『弁護士は元アイドル』山梨かおる

 コンピューターエンジニアリング会社の社長五十嵐が、六本木の高層マンションの自宅専用プールで死体で見つかる。警察は会社のブラック企業ぶりを批判していた社長室の杉田ひかりを疑い、現場で見つけた髪の毛が杉田のものとわかったので逮捕する。
 幼稚園児と暮らす杉田は無罪を訴えて台東区谷中の星野弁護士事務所に弁護を頼む。29歳の水野結衣は16歳から3年間アイドルをしていてその後弁護士になるも、事務処理能力や金銭感覚に問題があって2年ごとに事務所をクビになっていた。大学の友人星野が弁護士の兄に頼んで、共同で杉田の弁護をすることになる。ここからのどかな谷中の生活ぶりと法廷ものらしきドタバタが始まって、それなりに事件の解決へ向かっていく。検事のやり口や刑事の証言や操作方法も水野の弁護ぶりも、現実的ではなくてスラプスティックだから珍しい小説にはなっていて、杉田の無罪を勝ち取ったあとにもまだ別の種明かしが待っている。
 最初は中卒の五十嵐が45歳で有名企業の社長なのか、とか水野がどうやってアイドルから司法試験に合格できたのかとか、無理筋が気になったものの、どんどん派手さが増していくから、これはこの応募者の個性として認めてもいいという気になった。なにしろ水野は法廷で山場にくるとサングラスをかけて、乱暴な言葉を発して法廷侮辱罪になったりするんですよ。

(土屋文平)

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