第17回『このミス』大賞1次通過作品 シェイクスピアの子

大学生が”殺人予知夢”をもとに真相を暴く
企みに満ちた心理サスペンス

『シェイクスピアの子』吉良惟新

 同じ大学に通う桐野千咲と同棲している篠崎隼人は、不穏な夢を頻繁に見るようになった。ナイフで女を襲い、ライターで放火を図るというリアルな夢だ。回を重ねるごとに状況は進み、夢の中で女を刺した篠崎は講義室を飛び出してしまう。篠崎は同級生・夏川聡美の助言を受け、認知心理学講師の度会正康に「相談には乗る」と告げられるが、その翌日に事件が発生した。住宅街のアパートで女が刺され、部屋が放火されたのである。
 ほどなく次の悪夢が始まり、夏川と度会に助けを求めた篠崎は、千咲の目を盗んで夏川との逢瀬を続けていく。第二の殺人が起きた後、紀村左京の推理小説が自分の境遇に似ていると察した篠崎は、紀村と予知夢について語り合い、第三の殺人を阻止しようとする。
 予知夢が的中したような連続殺人は、それ自体が謎であると同時に、予告殺人めいたサスペンスの装置になっている。超自然や特殊能力で処理するのではなく、現実レベルに着地させる構成は(現在では)むしろ少数派だろう。被害者を救うべく苦闘する大学生のキャラクターも解りやすい。真相には強引さも目立つが、不可解なシチュエーションの方便としては許容できるものだ。
 ちなみに著者は五作を投稿しており、その出力はポジティヴに捉えたいが、ブラッシュアップや細部の修正に力を割くのも一つの判断だろう。多くの投稿歴と一定の評価を得ているだけに、個々の作品を磨くほうが近道かもしれない。

(福井健太)

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