第17回『このミス』大賞1次通過作品 クロユリの花

怪しげな女子生徒の目的とは?
私立高校で演じられる愛憎劇

『クロユリの花』浅葱惷

 私立藤ヶ丘高校の屋上で天文部の一年生・黒百合七瀬の絞殺死体が発見された。この学校では二年前にも天文部員・新垣七瀬が自殺していた。捜査を担当する海老谷と八月朔日は、黒百合が生活感のないワンルームに住んでいたことを知り、関係者たちに話を聞いていく。
 ここで物語は春に遡る。映画監督志望の「俺」こと野田将生は、屋上で煙草を吸う新入生・黒百合に出逢い、二人で映画を撮ろうと約束する。天文部の顧問・長谷川暁人とその婚約者である保健医・深田に接触した黒百合は、自分の書いた脚本を野田に託し、悲壮な計画を実行に移すのだった。
 女子生徒の変死をイントロダクションとして、過去の出来事を辿っていく学園ミステリーである。謎めいたヒロインを創造し、その言動で読者を惹きつけるオーソドックスな構成は、明快さとリーダビリティに繋がっている。やや古風な雰囲気はあるものの、冒頭にツカミのシーンを配し、適度に見せ場を挟む緩急も悪くない。語弊を恐れずに言えば、いかにも映像化に適した内容なのだ。
 計画にそもそも無理がある、周囲の反応が好都合に過ぎる、野田の独白に説得力がない──といった批判は容易だが、骨太のストーリーを綴るために(結果的に)大胆な選択をしたと取れなくもない。シンプルゆえの勢いを削ぐことなく、リアリティを増すための工夫を施せば、牽引力のある秀作に化け得るはずだ。修正の必要性を認めたうえで、二次選考に判断を委ねたい。

(福井健太)

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