第16回『このミス』大賞1次通過作品 黒川慈雨

星がきれいな夜に家族を殺された少年。
やがて訪れた流星群の日、彼が犯した哀しき復讐とは――。

『星になる』黒川慈雨

お父さんとお母さんとつばさくんはお星さまになったんだよ。
見惚れるほどに星がきれいな夜、両親と弟を殺され、わずか五歳でひとりぼっちになってしまった降矢昴に、その言葉はなんの慰めにもならなかった。その後、父の親友である辻谷家に引き取られた昴は、同い年の娘・遥とともに成長していく。いつか犯人が自首してくれることを信じながら、昴は次第に遥へ特別な想いを抱くようになり、遥もまた昴への恋心を募らせていく……。
まず、一人称の文体を少しずつ変化させて少年少女の成長や揺らぎやすい内面を活写していく、新人には難易度の高い試みに臆することなく挑み、一定の成果を挙げている点を評価した。凄惨な殺人現場を見て美しさを覚えてしまう昴の危うさや、「星」を死の象徴だけでなく孤独な昴の拠り所としても描くセンスにも、他の応募者より秀でた力を感じて惹かれた。また、昴の家族が殺された未解決事件の捜査を単独で進める刑事・砂原、遥の母・由希子のパートを挟むことで、昴を客観的に映す視点を加えるとともに、真犯人の恐ろしさをじわじわと読み手に伝える演出も悪くない。
ただ、狡猾な真犯人の造形と狂気の質には、こちらの予想を超えるほどの斬新さはなく、いささか類型的に感じてしまった。また、高校三年生になった昴と遥が、この町の最後の思い出に獅子座流星群を見ようと校舎の屋上へやってくる終盤。一面に広がる星空の下、昴が非情な現実ゆえに思い余ってしてしまう復讐は、驚愕や衝撃といったタイプのものではなく、ひとによっては肩透かしのように感じてしまうかもしれない(私はそこに若者の健気な強さと儚さを重ねて見たのだが)。
今回読んだ応募作のなかでは一番の出来であった。二次に推すことに躊躇いはない。

(宇田川拓也)

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