第16回『このミス』大賞1次通過作品 水無原崇也

“オーパーツ鑑定士”を名乗る、自分と瓜二つの顔を持つ男
水晶髑髏、黄金シャトル……次々に襲い掛かる事件にオーパーツの影あり
犯人たちの目的とは――?

『十三髑髏』水無原崇也

――気がつけば、目の前に分身(ドッペルゲンガー)がいた。
『十三髑髏』の書き出しを読んだ瞬間、あ、これは合格、と呟いた。小説のつかみとしては完璧である。自らの分身と出会ったのは大学生の鳳水月、彼の前に現れた古城深夜は、オーパーツ鑑定士と自称した。世界各地で、その時代の科学技術や歴史的背景ではありえない遺物が発見されている。それがオーパーツだ。深夜から互いに入れ替わりながら学生生活を送ることを提案された水月はそれを承諾し、奇妙な共棲関係に入る。物語は四章から成る連作形式で、それぞれで水晶髑髏や黄金シャトルといった有名なオーパーツが絡んだ事件が発生するのである。謎解きもさることながら、開陳される蘊蓄も小説の読みどころになっている。読み心地は軽快で、不要なサブプロットや読者を鼻白ませる饒舌といった、新人の作品にありがちな雑味がまったくない。この抑制のきかせ方は貴重であり、このまま刊行されても間違いなくファンがつくであろうレベルの作品だ。
 ミステリーとしては、第一章の「十三髑髏の謎」にもっとも華がある。トリックはよく考えられており、短篇として独立させても一定の水準に達した内容だ。残りの三章は残念ながらこれには及ばないが、補って余りある伝奇小説風の興趣がある。おそらく作者は現代日本ミステリーの良い読者なのだろう。探偵小説が持つロマンティシズムへの憧憬が随所から感じられ、心地よく読み進めることができた。注文をつけるとしたら主人公コンビのキャラクターで、オーパーツ鑑定士という職掌のおもしろさはあるものの、この二人ならでは、というおもしろさには欠ける。連作形式ゆえの薄味なのかもしれず、できれば次は完全な長篇を手掛けてもらいたい。書き続けて娯楽小説の骨法を修めれば、とんでもない書き手に化ける可能性を秘めているように思う。

(杉江松恋)

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