第16回『このミス』大賞1次通過作品 等々力亮

希少なチョウの激減と、異常繁殖したと思しきハチの関係は?
瀬戸内海の小島で発生した未曾有の危機に対処する
独立行政法人職員の活躍を描いたサスペンスフルなお仕事小説

『生態系Gメン』等々力亮

 最近注目を集めている外来種問題をテーマにしたエンターテインメントです。瀬戸内海の小島で天然記念物に指定されているシジミチョウの一種が激減、原因を調査するために独立行政法人「生物多様性監視機構」の新人男性職員と有能かつ型破りな女性上司が島を訪れる。けれども、開発の妨げになるとしてチョウを憎む村長は一切の協力を拒否、片や島では異常繁殖したスズメバチに刺されたと思しき老人二名が命を落としていた。希少種激減の原因究明が思うように進まぬ中、三人目の犠牲者の発生を契機に想定外の危機が浮かび上がる。
 何よりもまず目の付け所がユニークです。今回読んだ応募原稿の中では最もオリジナリティを感じました。純粋で熱意はあるけれど経験のない若者が、有能で魅力的な上司とコンビを組んで、組織に対する疑問や能力の限界を覚えつつも、苦難の末に目的を達成し少しだけ成長する。そんな所謂〈お仕事小説〉の面白さの核を忠実に守った上で、ひと味違ったサスペンス小説としてぐいぐいとページを繰らせるのは、彼らが対応を迫られる危機が過去に類例のないものだからです。日本固有の希少動植物の保護と、生態系に深刻な影響を及ぼす侵略的外来種の防除を行う環境省の架空の外郭団体に属する彼らが、物語の中盤で判明した未曾有の事態にいかに対処するか。スケールは小規模ながら、〈ミッション・インポッシブル・シリーズ〉や〈シン・ゴジラ〉にも通じる緊張感と興奮、そして爽快さを感じさせくれます。一抹の苦さが漂う結末も良し。視点のぶれや、会話が若干説明調になる点など瑕疵もありますが、一次通過の水準は十分にクリアしているこの作品を推したいと思います。

(川出正樹)

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