第16回『このミス』大賞1次通過作品 細霧伝

謎解きの舞台は新鮮な情報世界
主人公はちょっと頼りない新入り大学職員
活躍するのは魅力的な先輩女性

『学術情報部の悩み相談テーブル』細霧伝

 霧島白兎(キリ)が一流大学に就職できて配属されたのが、学術情報部のOA課。主に学生のパソコン関連のなんでも係という不慣れな仕事だった。洲賀崎咲(サキ)という教育係の女性と二人きりで、講義室の流血事故の謎や入退室の記録があるのに襲撃されたのが無人のはずの部屋だったなどの事件を次々に解決していく。といっても優秀な先輩サキが解いていくのを感心しながらキリはついていくだけなのに、その関係がほどが良くて気持よく読める。コンピューターの専門用語もやさしくわかるようストーリーに溶け込ませてある。
 メインとなるのは事件ではなく、毎年ゼミの教授が行うコンテストで、セキュリティ装置の設置された場所から書類を盗んでくるのが課題である。廊下の監視カメラや部屋の侵入感知装置と自動撮影のシステムをかいくぐらなければならない。サキはただひとりのかつての成功者で、卒業時には企業から引っ張りだこで3年勤めてから大学に戻ったという過去もここで明らかになり、今年はまた参加することになり、さあどうなるか、で結果が出て終わる。
 まあ「ミッション・インポッシブル」のほのぼのバージョンとでもいうしかない作品です。謎はあくまでお手頃で特殊な発明品を使うわけでもなく、悪人は出てこないし殺人も起きない。ミステリーだからといってそのための殺人事件ばかり読んでいると、このほうがかえって意欲作に思えてきました。
 冒頭にキリが大学の泉のある景色を見て、卒業旅行で見たイギリスの田舎みたいだと思ったり、なぜ自分が採用されたのか、疑問に感じたりするのは伏線なんだろうなと推測しているとなにもないあたりは不満ではあります。人物造形も浅さが気になります。それでも読ませる力はありました。

(土屋文平)

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