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  • 『からくり弁吉』森山五丈

    『天空の文化祭』夏北航希

    『ねこみす』九頭竜正志

  • 福井健太コメント
  • 過去に刊行された受賞作(や隠し玉など)の多彩さが功を奏したものか、本賞の投稿作は“ミステリ新人賞”の枠に収まらないバリエーションを備えている。これは大きな特徴にしてアドバンテージに違いないが、今年度もその傾向ははっきりと見て取れた。「エンターテインメントを第一義の目的とした広義のミステリー」を求める側として、この裾野の広さは心強い限りだ。
     森山五丈『からくり弁吉』は第8回の最終候補作『太陽に向かって撃て』の著者による歴史モノ。江戸時代の世相をプロットに絡めつつ、写真箱や薬莢などの“からくり”を駆使した江戸城図の争奪戦を描くという着想は面白いが、全体的にケレン味に欠ける感は否めない。魅力的な小道具が揃っているだけに、もっと娯楽性を高めることも可能だったのではないか。
     夏北航希『天空の文化祭』はガジェット指向型の本格ミステリ。群馬県の地方都市・舞鷹市には戦時中の怪異に由来する天狗伝説があった。1969年の文化祭では学生運動グループ“黒い鷹”が講堂に籠城し、1989年の文化祭では“黒い鷹”を名乗る怪人が屋上から消えた――という過去を持つ舞鷹高校で、20年ぶりの(女子校との合同)文化祭が企画される。そこへ“黒い鷹”らしき人物の怪文書が届き、生徒会の面々が調査に乗り出していく。人間消失と暗号の謎、戦時下の秘密計画、クライマックスのイベントなどを取り揃え、ひとつに纏め上げた構成はすこぶる好ましいものだ。むしろ本作の弱みとしては、リーダビリティを無視した表記法を含む“文章の読みにくさ”を挙げるべきだろう。多くの場面を詰め込もうとしたぶん、その欠点がさらに増幅されているのも残念。読み手の目を意識することを望みたい。
     文章の滑らかさという点では、九頭竜正志『ねこみす』は好感を持って読めるテキストだった。一話ごとに語り手を変えながら、様々な猫をめぐる5つの事件を綴った連作集だが、リズミカルな語りは全篇に共通している。各篇にわずかな繋がりはあるものの、基本的にはシンプルな謎解きの反復に留まっており、その“足し算”だけではやや物足りない。全体を貫くような仕掛けを増やす、あるいは外枠を据えて長篇化するなどの工夫が欲しかったところだ。
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