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  • 診療所で発生した同時多発立て籠もり事件。
    捜査陣内部の駆け引きや新聞記者の絡み、
    そして真犯人の大胆な行動に目が離せない!
  • 『トリプル・アクセス』
  • 戴天洙吏
  • 銃で武装した犯人たちが、人質をとって診療所に立て籠もるという事件が発生した。草壁たち四人の刑事は現場に急行する……。
     という具合に幕を開けるこの作品、なにより展開が魅力的だ。例えば冒頭の立て籠もり事件にしても、系列の他の二ヵ所の診療所でも同時に立て籠もり事件が発生しているという具合に、読者の想定の一歩先を進み続けてくれるのである。
     草壁たちのもとに警視庁捜査一課から指揮官が送り込まれるが、その彼は、草壁とは犬猿の仲。しかも、彼とその補佐役は、事件の真相究明より政治的配慮を優先する輩であった……。
     この展開もまた読む者を惹きつける。3ヵ所で事件を起こした犯人グループと捜査陣の対決に加え、捜査陣の内部の駆け引きも愉しめるのだ。さらにそこに新聞記者たちも絡んできて、一連の出来事が多角的に描写されていくのである。その捜査陣一人ひとりや、新聞記者たちも個性派揃いでよい。そうした面々が3ヵ所の立て籠もり事件を追っていくと、中盤で事件の様相がガラリと変わるという仕掛けも用意されている。これまた嬉しいポイントだ。
     そうしたなかに意外な人間関係やパスワードの究明といったエッセンスも加味されており、読み手を退屈させない造りとなっている。また、真犯人が大胆に、かつめまぐるしく行動する点も作品の魅力を増加させている。
     といった案配にサービス精神に溢れた一作であるが故に、人物造形や意外性にところどころ作りすぎという設定が見られなくもないが、そこはまあ許容したい。現実らしさに拘泥するあまり萎縮してしまったのでは、この作者の持ち味は失われてしまうだろうから。
     視点のぶれは気になるが、十分修正可能な範囲だろう。
     とにもかくにもエンターテインメントに徹した作品であり、スピーディーな物語を素直に愉しむことが出来た。
  • (村上貴史)
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