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  • ネパール旅行から帰国中に失踪したミュージシャン。
    バンド仲間が行方を追うが、彼は樹海に囲まれた
    不思議な「街」に捕らえられていた……
  • 『マーラーの機関車』
  • 大峰樹
  • 秋山浩は売れっ子のロック・ミュージシャン。だがバンド活動は、開店休業状態だった。相棒の音沢翔吾が行方不明になっていたからである。音沢翔吾は3カ月前、インド・ネパール旅行から帰った際に空港から連絡をよこしたきり、音信を絶ってしまったのだ。秋山は門倉という探偵の協力を得て、音沢翔吾を探し始めた。数年前の霧多布での自動車事故に関係があると考えた秋山は、門倉探偵とともに現地へ向かう。事故の際に音沢翔吾を助けたという朝霞美禰子にも会って話を聞くが、有力な手がかりを得ることはできず、かえって謎は増すばかりだった。
  • その頃、音沢翔吾は記憶を失った状態で、見知らぬ部屋で目を覚ましていた。やがて、自分が小説家であること、全く知らない街にいることが判ってくる。数日かかって現在の状況に関する記憶は戻り、小説家としての生活を送っていたが、ミュージシャンだったことは思い出せない。混乱する彼は、この街がどこにあるのか、自分がどうしてここにいるのかを探り始める。街は広大な樹海に囲まれており、街の外については地図すらない。
  • やがて、秋山のもとへひとりの女性が訪ねて来る。大学時代の一時期、音沢翔吾と付き合っていた赤坂椎名である。彼女は、秋山への伝言をとある女性から頼まれたというのだ。それは音沢翔吾のもとへつながる手がかりとなるのか。
  • 果たして秋山は、音沢翔吾を見つけ出すことはできるのだろうか。音沢翔吾はどうしてその「街」へ行くことになったのだろうか……。
  • 秋山のパートと音沢翔吾のパートが交互に語られ、最後にそれがひとつに収束するとき、謎は解明される。
  • 幻想的で、不思議な味わいの作品。小説としての完成度は一定のレベルに達しているものの、『このミス』大賞向けかというところには確信を持てない。とはいえ、昨年の大賞受賞作『トギオ』(太朗想史郎)の例もある。2次以降の選考委員の皆様に、判断を預けることにしよう。
  • (北原尚彦)
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