第13回『このミス』大賞 1次選考通過作品 降田天

片田舎の小学校の一クラス。
子供たちの繰り広げるパワーゲーム。
その意外な結末は……?

『女王はかえらない』降田天

 きわめて誠実に、読者を騙そうとする小説だ。冒頭から、すでに仕掛けが張り巡らされている。
 読み終えたとたん、最初のページに戻ってもう一度読み返したくなるミステリーがある。本作がまさにそれだ。読み終えて、すぐ先頭に戻って読み返し、思わず「うひゃあ」と声をあげてしまう。快楽のツボを突かれた気分。うわあそこでそんな綱渡りをしていたなんて。二回目に読むときに浮かび上がる風景は、一回目のそれとは意味合いが異なる。ゾワゾワと背筋を何かが駆け抜ける。騙しの手際に長けた作品を読んだ時に駆け抜ける何かが。
 ……ただし、正直に書いておこう。これまでに何度もいろいろな作品に騙されてきた読者なら、あるいは作者の企みに気づいてしまうかもしれない。ただ、それは必ずしも欠点とは言い切れない。素敵なアクロバットなら、何をやろうとしているのか分かった上で堪能できる。たとえ仕掛けが見えてしまっても、「おいおい、それをやる気なのか?」と、作者の大胆さがどこに着地するのかが楽しみになる。
 もちろん、ただ強烈な驚きだけに寄りかかった作品なんかじゃない。驚きの向こう側に浮かび上がる風景もまた忘れがたい。単に読者を驚かせておしまいではなく、物語そのものの衝撃もまた強力なのだ。
 ……と、ここまで本作のストーリーについて全く触れていなかった。この小説の中心にあるのは、片田舎の小学校の一クラスを舞台にした、二人の少女による権力抗争。小学生同士のいさかいなんて読んで面白いのかって? 面白いね。お互いの取り巻きを切り崩して味方につけ、隙あらば相手を陥れる。そんなパワーゲームが、小学生らしい単純明快さと、そして陰湿さをもって繰り広げられる。その権力抗争の過程で……おっといけない、この作品の予備知識はなるべく少ない方がいい。驚きとその向こうにある衝撃が最大限に引き立つように、巧妙に組み立てられた作品だ。

(古山裕樹)

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