第13回『このミス』大賞 1次選考通過作品 出馬光

一千万円の援助金に導かれて集まった五人の男女。
彼等が体験する三日間の研修とは!? 
驚愕の展開に拍手喝采

『いのちの研修』出馬光

 三日間の研修を無事に終えれば、夢の実現を支援するための援助金として一千万円をプレゼントする〈ドリーム・プロジェクト〉。その研修生五人が、信州の山奥の山荘に集った。これから三日間の研修が始まるのである。その山荘に管理人はいたものの、主宰者本人はいなかった。主宰者は山荘のTV画面を通じて指示を出したのである。その指示に従い、五人は夢を語ったが……。
 序盤を読んでいる間は、近年よくあるデスゲームものかと思っていた。何人かの人物が一箇所の閉鎖的な環境に集められ、そこで何らかの目的のために殺し合いをさせられ、生き残った者が勝ち、というあれだ。実際に序盤はそのように進んでいく。その時点では、デスゲームスタイルにいささかうんざりしつつも、五人のキャラクターの強さに惹かれ、意外と快調にページをめくっていた。そして四分の一ほどが過ぎ、作中で二日目に入ったあたりで、ストーリーがグイグイとねじ曲がる。え? え? え?
 いやはやたまげた。こんな展開が待ち受けていようとは。この二日目に物語は、グイとねじ曲がり、さらにまたグイとねじ曲がるのだ。そのねじ曲がり方が予想外で素敵だし、予想外ではあるが、それまでの語りをしっかりと活かしたものである点も素敵だ。
 キャラクターたちの変化も読み手にページをめくらせる牽引力となっている。この作品の前半は、複数の人間がカミングアウトを続けるという単純な構図なのだが、それはそれで興味深く読めるし、その告白内容と物語の関連もまた刺激的だ。
 気になるのは、結末が近付くにつれ“情”の要素が色濃くなってくるところ。情のせいで登場人物にためらいが生まれる。もちろんそれはリアルではあるのだが、これだけの絵空事のなかに放り込む要素としてどうか。手際よく着地させられているだけに、この展開でも問題ないとは思いつつ、そこに至るまでの刺激を考えると、どうにも大人しいのだ。果たしてこの結末、リアルでよいと評価されるのか、物足りないと評価されるのか、あるいは作中でそこだけ浮いていると評価されるか。
 そんな具合に評価が分かれそうなポイントはあるが、それでも、全体としてよく作り上げられた一作であることは確かだ。二次選考に進む力量は十分にある。

(村上貴史)

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