第13回『このミス』大賞 1次選考通過作品 安藤圭

OL一年目。
風俗情報誌の編集者として社会人デビューした里美が、
異常と謎の数々を身体を張って経験する!

『風俗編集者の異常な日常』安藤圭

 キワモノかなぁ。キワモノと思われてもしかたないよなぁやっぱり。“風俗”だし“異常”だし。しかもその“風俗”が、小学館の国語大辞典で言うところの「諸国で行われているならわし」とかじゃなく、都道府県の公安委員会の許可を必要とするあっちのほうだしなぁ。つーか無許可も多そうだし。
 んで、この作品だ。
 編集者になりたくて大手出版社を受けたもののすべて討ち死に。一般企業にターゲットを変更したがやはり連戦連敗。職が決まらないまま秋を迎えた女子大生の里美が、街で声をかけてきた風俗スカウトの男に導かれて風俗情報誌の出版社に就職して――という物語である。
 春が来て働き始めた彼女は、あるとき、社内のスタジオでとんでもないものを発見した。ある風俗店でトップ人気を誇る愛ちゃんの首が転がっていたのだ。一体誰がなぜ愛ちゃんを……。その事件の謎を、里美をスカウトした彼、牧人が鮮やかな推理で解明する。推理のロジックの切れ味も愉しめるし、明かされる真相の意外性も十分。まさかこんな決着とは。すげぇや。
 とまあこれが第一話。そう、この小説は、連作短篇集のスタイルで書かれているのである。里美が新米編集者として様々な経験を積んでいく姿を、数々の事件とともに語っていくのだ。彼女はその後、中国系のエステ店でユナちゃんが殺された事件や暴走するSMの女王様が引き起こす騒動に巻き込まれつつ、風俗店からのクレームを何とかさばき、身の危険にもさらされ、そうかと思えば彼氏と別れたり、別の男と同棲も始めてしまったりする。まさに異常のなかの日常が続いていく様が描かれているのだ――連作短篇ミステリとして。
 そうしたミステリを、この作品では風俗業界ならではの用語やプレイで彩りして読者に提示しているわけで、それだけで敬遠してしまう方がいるかも知れない。だが、開き直った里美が生むユーモアと、彼女を取り巻く男性たちのえげつないまでに露悪的な言動が生む可笑しさは、読者にページをめくらせる力を十分に持っている。しかもだ。この作品、実はミステリとしてのヴァリエーションにも富んでいるのだ。例えば日常の謎とか、前述の首の問題とか。その面でもきちんと愉しめるのだ。
 そしてその連作を通じて描かれていくのが、里美の成長である。いやはや立派になってくれたものだ……。
 こんな作品である。いっくらキワモノに思われそうだとしても、これほどの中身の一冊をここで眠らせてしまうわけにはいかない。ためらわずに二次に推す。

(村上貴史)

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