第13回『このミス』大賞 1次選考通過作品 井塚智宏

連続殺人の目撃者は孤高の美少女
警護するのはガサツな女性ボディガード
顔の見えない殺人者が二人に迫る

『ブラックリスト』井塚智宏

 元警官で現在は女性ボディガードをしている片瀬塔子。彼女は、かつての上司である犬飼から、女子高生・松島美月の警護を依頼された。
 美月は、学校でもトップクラスの美少女だった。だが、人を寄せ付けず、友人もおらず、孤立していた。それには理由があった。彼女は人の顔を判別できない「相貌失認症」だったのだ。
 そんな美月は、連続射殺事件を目撃していた。しかし彼女の抱える病気ゆえ、犯人が再び目の前に現われても、そうと判らないのだ。だが犯人は彼女を狙うだろう。
 諸事情から、塔子は美月を自宅に引き取って警護をすることになった。最初はぎこちない間柄だったが、お互いに少しずつ心を開いていく。
 一方、美月の同級生の東出潤也は、図書館で美月と出会ったことから、彼女に接近していく。美月も、珍しく彼には近付いていく。
 だが遂に、怪しい人物が美月に接近してきた。果たしてそれは連続射殺犯なのか……。
 いわば女性探偵物である。探偵が若者と心を通わせていくところは、ロバート・B・パーカー『初秋』のようでもある(ジェンダーは違うが)。
「相貌失認症」の使い方としては、うまくミステリーに取り込んでいる。またそれゆえに「孤高の美少女」にもリアリティが出ている。その他、女性ボディガード塔子、美少女に近付きたい高校生・潤也、そして「情報屋」など、キャラが立っている。ただ、時々設定にバランスの悪いところがあったので微調整した方が良いと思われる。
 また文章力において、単語の用法や言い回しなど、おかしなところが散見された。これに関しては、もう少しなんとかして欲しい。
 全体として完成度にむらがあった。非常に面白くぐいぐいと読ませる部分があるかと思えば、読んでいてひっかかってしまう部分がある。いずれにせよ、改稿は必要だろう。
 一次選考を通すにはギリギリのラインで悩んだが、手を入れればぐんと出来がよくなると思われたので、通過とした次第である。

(北原尚彦)

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