第13回『このミス』大賞 1次選考通過作品 小林正和

小学校の連続変死事件にまつわる都市伝説
子供たちを操る“蛾女”の正体とは?

『蛾蝶の舞う夜に』小林正和

 澤田小学校四年二組の生徒・河野泰子がマンションから転落死した。自殺の動機や遺書は見当たらず、警察は事故として処理するが、担任教師の紅木悠はいじめの隠蔽を疑われる。一年後、紅木が担当する五年二組の高森美奈も転落死を遂げ、生徒の一人が「蛾女だよ」と口にした。やがて体育館倉庫で近藤校長の首吊り死体が発見され、他殺の噂が囁かれる。近藤は二人の死を調べていたらしい。いっぽう高校二年生の雨宮祐美は、友人の妹・玲奈のもとを訪ね、河野と高森は“蛾女”に殺されたのだと聞かされる。
 人間に子供を殺された“蛾女”という都市伝説めいたイメージを掲げ、五年二組を支配する黒幕の正体を探るサスペンスである。マスコミや父兄の反応を絡めつつ、子供たちの閉鎖的なコミュニティを描き、女子高生の真相探しにフェーズを切り替える構成はすこぶる効果的。変死の謎が解かれた後、ストーリーは急展開を迎えるが、終盤の畳み掛けはミステリの醍醐味に満ちている。パニックに襲われた小学校の教師と生徒たち、過去を悔やむ女子高生──双方のドラマを接続し、巧みにサプライズを演出した高密度の佳作。一次選考は悠々とクリアである。

(福井健太)

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