第13回『このミス』大賞 1次選考通過作品 寺崎俊

変人調査員が猟奇殺人鬼を追う
“切り裂きジャック”テーマのダークスリラー

『リッパーマニア』寺崎俊

 切り裂きジャックを模した猟奇殺人譚は一つのジャンルを成している。たとえば本賞でデビューした中山七里は、異様な殺戮が繰り返される『連続殺人鬼カエル男』を経て、犯人がジャックと名乗る『切り裂きジャックの告白』を発表した。本作もその系譜の物語と言えそうだ。
 A&N経済調査研究所に勤める「僕」こと仲原は、尾行対象の不動産会社副社長・佐々木信吾が階段から転落するのを目撃した。昏睡状態に陥った佐々木の鞄からは、殺人鬼“喉切りマニア”の被害者・横山志津恵の遺体写真が見付かり、仲原と同僚・七木田真一は調査を命じられる。喉切りマニアは雨の夜に三人の女性の耳を削ぎ、その喉を掻き切っていた。横山が売春を斡旋していたと知った仲原たちは、殺人鬼と都市を研究する名誉教授・布施吾郎を訪ねるが、彼の助手・相馬良美が殺されてしまう。
 切り裂きジャックへの言及や分析を挟みつつ、世を騒がせた大事件を描くスリラーである。妄想癖があるとして悪評の高い七木田は、その想像力で入り組んだ事件の核心に辿り着く。警察にメッセージを送り付ける犯人の意図、秘められた動機などの”事件の構造”に新味はないが、最後の一文に収束する狂気のありようは興味深い。殺人鬼論を深化させ、七木田のパーソナリティを強調できれば──という不満はあるものの、難度の高いプロットに挑んだ姿勢を買いたい。

(福井健太)

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