第13回『このミス』大賞 次回作に期待 福井健太氏コメント

『アースシャイン・キネマトグラフ』史梁廣
『傳通寺ヶ丘攻略記』檜友陽
『告白ジョーカー』暁雅人
『溶ける氷のように』優騎洸

福井健太コメント

 新人賞の投稿作にも流行がある。一昔前には(必然性もない)多重人格者やアダルトチルドレンが大量に描かれたものだ。しかし売れ線に見えたとしても、多くのプロが扱った題材に挑むことは、必ずしも賢明な選択ではない。読者が飽きている可能性、類似作の山に埋もれる可能性などを先に考えるべきだろう。力量を伴うオリジナリティこそが武器になり得るのだ。
 今年度の「次回作に期待」に採った四作は、惜しくも一次通過には及ばないが、いずれも自前のアイデアを擁するテキストだった。史梁廣『アースシャイン・キネマトグラフ』は、バーのマスターが学生時代に遭遇した変死事件を語り、常連客が真相を推理する話。全篇を映画のモチーフで彩り、トリッキーな仕掛け(前例はある)と映像表現を結び付けることで、一つの異空間が醸されている。広範な読者へのアピール力があれば傑作になっただろう。
 檜友陽『傳通寺ヶ丘攻略記』は軽妙なクライムノヴェル。副住職を中心とするチームが強盗犯の一味に報復する──という物語だが、シミュレーションゲームの企画を手掛ける主人公たちの会話とセンスが風変わりで面白い。この造型スキルを活かし、掴みのあるプロットで再挑戦して欲しい。
 暁雅人『告白ジョーカー』は高校生のラブコメに軽い謎解きを交えたライトノベル。都市伝説的な”告白寸前に異常思考に陥る”現象を設定し、ストーリーを無難にまとめているが、強く推すにはインパクトが足りない。キャラクターを極端にデフォルメするのも一つの手だろう。
 優騎洸『溶ける氷のように』は超能力者が密室で殺されるSFミステリ。”不可能性の検証”の甘さは否めないが、本作の肝はロジカルな推理ではなく、奇抜なトリックのアイデアにある。これは(評価は割れるにせよ)波長の合う読者には魅力的なものだ。全体的に不要な記述が多く、規定枚数を超えているのが残念。
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